今年の夏休み
「ま、ま、マジっすか?」
「さすがに下までは脱がせなかったけど」
「佐古さ~ん、嘘って言ってくださいよ~」


佐古さんは、あっさりと「じゃ、嘘」と言い放つ。

どっちだよ!

佐古さんはけたけたと「ワタル、可愛い奴だな、お前」なんて笑ってる。
む、と膨れていたら、
「そうそう」と佐古さんが真面目な顔をして話を続けた。


「ルルちゃんだっけ?」
「ルルちゃん?…あぁ、昨日の」


ルルちゃん、ってか、ワタナベだろ?
同じクラスで、学園祭の実行委員のワタナベアキだろ?


「あの子さ、おまえのゲロの始末、全部したんだぜ?」
「ゲロ?俺がですか?」
「いきなりさ、気持ち悪い~とか言って立ち上がってトイレに行ったの覚えてない?」
「あ、なんとなく…」
「なかなか戻ってこないからトイレに見に行ったら、
 おまえ、従業員の休憩室のソファーで寝てて
 ルルちゃん汚れた床や便器も、拭き掃除しててさ、
 ま、それが仕事なんだろうけどさ」


偉いよなー。
水商売って金はいいけど、客の後始末とかもしなきゃいけなくってさ~、
俺はできないなーと思ったよ。
時給安くてもここでいい、って思ったね。

佐古さんは1人で喋り続けていたけど、
俺はそれどころではなかった。


「マジで…それも嘘ってことは…?」
「嘘?俺、嘘つかないよ?」
「え?ストリップってのは?」
「あ、そろそろ休憩終わりだな、俺、外でタバコ1本吸ってくるわ」
「ちょっと、佐古さ~ん!」


佐古さんは、タバコを1本口にくわえて、休憩室を出て行った。


佐古さ~~~ん、佐古さ~ん・・・佐古さん・・・・

嘘って言ってくださいよ・・・
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