今年の夏休み
店内は、やかましいくらいの大音量でロックが流れていて
俺とワタナベは耳と口を寄せ合えなければ会話できなかった。


「富永くん、普段どんなの聞くの?」
「パンクとか」
「そういうのも入れとく?こっちなんかはどう?」
「あとはオリコン上位の曲を適当に入れておけばいいか」
「そだね」


周りを見ると、カップルが肩を寄せ合ってCDを手に取ったりしている。

うわ!あのカップルなんか、そんなとこ一緒に入ってくの?

R指定のアダルトコーナーに入っていく2人を見て赤面し、俯く。
ワタナベが、俺のTシャツの背中を引っ張って、密着しながら身元で
「これもよくない?」
なんて聞いてきた。
ふと、周りから見たら俺とワタナベもカップルで
デートをしているように見えるんじゃないか?と思った。

俺が持つバスケットの中に、
放り込まれるCDに比例して、重くなっていくのだが
気持ちは何でかふわふわと浮きだった感じで
真剣にCDを選んでいるワタナベの横顔を見ると、自慢したい気分だった。

可愛いだろ?
俺の・・・・、俺の・・・・?
・・・・・俺の何?

然として、黙り込むしかなかった。
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