今年の夏休み
ワタナベから電話が掛かってきたのは
借りてきたCDを録音している最中だった。
日は変わり、時刻は1時近くになっていた。


「どうしたの?こんな時間に」
『あのね…今お店からの帰りなんだけど、さっきから後ろ付けられてるみたいで』
「え!今どこ?」
『駅前のコンビニに入った』
「ちょっと待ってろ!すぐ行くから!」


俺は全力でチャリを漕ぎ、
駅前のコンビニに着いたのは電話を切って10分後だった。
息を切らしながら、
立ち読みをしているワタナベを外から見つけ、
ガラスを叩くと
暗い表情をしていたワタナベが明るく笑った。
コンビニから出てきたワタナベに「大丈夫?」って聞くと
「わかんない」と力なく首を振る。
「家まで送るから」と、自転車を押しながら、並んで歩き始めた。


「こういうの、今日が初めて?」


ワタナベは、ううん、と言った。
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