今年の夏休み
でも今日の実行委員会にはワタナベも来るはずだ。
どんな顔をして会おうか。
いや、ちょっと言い過ぎたけど、俺は悪くなんかないだろ?
間違ったことは言ってないつもりだ。
堂々としてりゃいい。


駅のホームでいつものように通過する急行や特急電車から放たれる突風を
身体に直に受け、各停が来るのを待つ。
後ろから「おはよう」と声がした。

ワタナベだった。


「あ…おはよう」


挨拶をし合うと、後は続かなかった。
ワタナベは何も話し掛けてこなかったし、
俺もいつものくだらない話をする気にはなれず、
変に身体を強張らせて緊張していた。

電車の中は混み合っていて、
夏の暑さと、人の熱気で空調は全く効いていなかった。
俺は吊革に捕まったけど、
ワタナベは持つ場所がどこにもなかったようで、ぐらぐらしていた。
俺が自分の腕を差し出すと、
ワタナベはおずおずと捕まり、「ありがと」と言った。
こんなにも暑い日なのに、
ワタナベの手の平はひんやりとしていた。
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