今年の夏休み
それから、思い付くままに子供の時にやった遊びをやった。
しりとり、とか、ただのじゃんけんとか、
しょうもないなぞなぞとか。
これはくだらなすぎて、お互い2問ずつ出し合ってから、止めてしまった。
ワタナベは『アルプスいちまんじゃく』を教えてくれたが、
難しくて覚える事ができなかった。


「腹減ったなぁ」
「夜食持ってきたよ」
「わっ!マジで!!」


ワタナベは小さい女の子がピアノのお稽古に持っていくような手提げカバンの中から、
水玉模様の大判のハンカチに包んだ弁当箱を取り出した。
蓋を開けると、小振りのおにぎりが6つ並んでいた。


「すげー、ワタナベが作ったの?」
「おにぎり、握っただけだよ?」


料理なんて調理実習の時も、
隅の方で見てることしかできなかった俺は、
ご飯に具を詰めて握って、海苔巻いて、ってだけで
偉業を成し遂げることのように思えた。


「これ、中、具は何?」
「ふふふ~、食べてからのお楽しみ。全部違うんだよ」
「ふぅん、じゃ、これ」


俺は、端っこの1つを取り上げ、食い付いた。
ワタナベはその隣をつまんだ。

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