佐藤くんは甘くない


「わあ、じゃあみんなで勉強会?」

ひまりちゃんが嬉しそうに手をあわせて微笑んだ。


「そうそう。一人じゃ結城は手におえないけど、朝比奈と俺もいればまあ、大丈夫だろ。さすがに。で、どうですか唐沢先生」


瀬尾が晴れやかな笑みで、いまだ私の襟首を掴む唐沢先生に言った。

こういうときの瀬尾は良くも悪くも、策略家だ。


いかにもな雰囲気を作り上げて、人を断らせにくくするなんて瀬尾にとっちゃ簡単だろう。


「あ、……ああ、確かに。朝比奈も瀬尾も成績は上位だしな」

「じゃあ決まりです。ってことで、もう帰ってもいいですか先生」

「悪かったな、引き留めて」

「ほんとですよ」

「お前は無駄口を叩くな、結城」

「いてっ、先生暴力反対!」


唐沢先生はようやく私の襟から手を離すと、複雑な表情を浮かべて職員室へ入って行ってしまった。


た、助かった。


「さ、サンキュー瀬尾」

「お前相変わらず、数学だけは不得意なんだな」


飽きれてしまった瀬尾に。くっそう。

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