佐藤くんは甘くない
「じゃあ私がひまりちゃん役をやりますね」
「俺は?」
「瀬尾は私で。瀬尾の役はうーんと」
視線を巡らせる。あ、思い出した。私は瀬尾のベットの下に手を突っ込んで適当に手を動かす。
とん、と手に冷たい感触が伝わった。
私はそれを引っ張り上げて、じゃーん!と言わんばかりに自分の隣に置く。
「うわ、何ソレ」
佐藤くんが若干引き気味に、それを見た。
「つい最近、すぐ近くのコンビニで冗談で一番くじ引いたら、あたった景品です」
「俺に押し付けた、な」
苦笑いで瀬尾が見る。
私よりも少し大きいくらいの抱き枕。
そしてそこには筋肉ムキムキの肩にタオル詰め込んでんじゃないかってくらいに筋肉質の、『ここは俺に任せて先に行け』とセリフが書かれた眉太のキャラがプリントされていた。
「等身大抱き枕、熱い男たちの戦いの、えーっとなんだっけ?
忘れたけど、売れ残ってたやつです」
「瀬尾はどっちかっていうと、俺のことは殺さないでくれぇアイツが悪いんだっとか言いそうだけど」
「佐藤の中の俺くっそしょうもねえなオイ!」