佐藤くんは甘くない


私はその抱き枕を抱えて、瀬尾の部屋を出た。続いて瀬尾と佐藤くんも部屋を出る。


「じゃあとりあえず店内に入ったところから想定してみますか」


そういって私が振り返ると、瀬尾が、


「うわ、振り返るなよ。抱き枕当たんだろーが!」

「あーしまったー滑ったー」

「だから振り返るな!声がわざと過ぎるんだよ!」

「さっさと入れよグズ」

「すいません調子乗りすぎました」


というわけで、私たち一行は店内(瀬尾の部屋)へと来店したのだった。


「いっらしゃいませ~何名様ですか?」

「そこからやる必要、ある?」

「雰囲気がほしいじゃないですかぁ。佐藤くんだって、ひまりちゃんと話すためにいろいろシチュエーション考えてたじゃないですか!」

「えっ何ソレ」

「っっ、あー、いいからさっさと座れよ!!」


佐藤くんが顔を真っ赤にして、瀬尾の背中をぐいぐい押している。

それが可笑しくって私が少し笑うと、佐藤くんは口をふくらまして、


「……それ、もう言わないで」

と弱気な口調で、小さく言った。


あああああっ、もう佐藤くんってばなんでこんなに可愛いんだっ!!

この地球上でもっとも可愛い存在と言っても過言じゃないくらい可愛いっ!!



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