佐藤くんは甘くない
斜め上の視界で、私がもらうはずだったポッキーを食べる瀬尾の姿があった。
「……せ、おぁあ!てめえ……っ、ひまりちゃんからの愛のポッキーを……っ」
「ホッソイ愛情ですこと、うぷぷ」
意地悪く目を細めながら、最後の一口をぽきっと食べるとひまりちゃんにごちそーさまと手をあわせる。
そこまで律儀なら私のポッキー奪うのはどういうコトだよ!
机をバンバンたたきながら悔しがる。
「この恨み……っ、墓場まで持って行ってやる……っ」
「ポッキー一本で恨まれたら、命何個あっても足りねえよ」
「瀬尾くん、今日はこはるちゃんが日直で早く行っちゃったから、きっと寂しかったんだよー」
ぴたり、と私の机を叩いていた手が止まる。
恐る恐る顔を上げると、にこにこしながらね?と首を傾けるひまりちゃん。
それから、横でしばらく固まっていた瀬尾に視線を向ける。何度か目を瞬かせた後、苦笑しながら、
「違うよ、朝比奈さん。そんなのありえないから」
「……」
うっせ。
知ってんだよ、そんなこと。