佐藤くんは甘くない
そうして私たちがいざこざしている間に、
佐藤くんも視線をきょろきょろさせて、近くにあった自分の鞄から勉強一式を手に取ると、それを広げる。
「……」
いやいや、佐藤くん真面目に勉強始めちゃったよ。
隣に一応、ひまりちゃんの代理がいるんですが、ちょっと君。
必死になる横顔は、いつもよりも大人びて見えて、しなやかな首筋に黒い髪が降りかかるたび、ウザったそうにそれを払いのける。
真剣になってる佐藤くん、可愛い。
って!
そういう場合ではなくて!!
「さ、佐藤くーん?」
「……」
めっちゃ集中してるんですけど。
思い人、隣にいる設定なのにめっちゃ集中してるんですけどー!?