佐藤くんは甘くない


うーむ。

この状況ならひまりちゃん一体どうするんだろう。


ひまりちゃんほわほわしてて、佐藤くんの真剣さにつられてせっせと勉強しそうだなぁ。


ちょっと想像して吹いてしまった。

土曜日、目の前でそんな光景が展開されるのが。二人とも素直で真面目だから。


なーんて考えていると、視界の隅でぽろっと何かが落ちる。


なんだ、と思って下の方を見てみると、消しゴムが転がっている。



きっと佐藤くんが集中しすぎて、肘か何かにあたって落ちてしまったらしい。

私はそれを拾い上げて、そっと佐藤くんのそばに置く。


気付かないようにしたつもりだけれど、視界に入ったのか、佐藤くんがふっと顔を上げた。


「……あ、ありがと」

「いえいえ」


小さく笑う。

うーんっと、ここなら、ひまりちゃんなんて言うだろう。あ、そうだ。こんな感じに言うだろうきっと。



「勉強も大切だけど……、


 佐藤くんともっとお話してみたい、です」




で、この辺であの天使スマイル。なんて私のできる所業じゃないけれども。


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