佐藤くんは甘くない
「……あーうー……っ」
「さ、佐藤くんこれまだ序の口ですから!ひまりちゃんだったらこれ以上の追撃を仕掛けてきますから……!」
「……待って、今、落ち着くから」
ぶんっと私の前に手のひらを向けて、ストップをかけてくる。
きっと例えるなら、2アウト満塁で逆転勝ちできる状態で、マウンドに立たされた期待の四番バッターの面持ちくらいな感じである。違うか、違うね。
少しずつ冷静になってきた佐藤くんが、ぼうっとした様子で、
「……心臓に悪い」
「それはひまりちゃんの友人としては同感ですが」
「心臓持ちそうにない、無理。そんなこと言われたら、何にも言えなくなりそう」
「佐藤くん相変わらず乙女ですねぇ」
「うっさい馬鹿」
消しゴム投げられた。
また私拾わなきゃいけなくなっちゃったじゃないッスか。まったくまったく。
それを拾って、佐藤くんの手のひらに差し出して、私は、
「じゃあさっきの続きから行きましょうか」
「……うん」
佐藤くんがきっと顔に力を入れて、私を見た。いやいやそんな般若顔を晒されましても。