佐藤くんは甘くない
「そっかぁ、うんごめんね」
ひまりちゃんは時々鋭い。
いつもふわふわしてて、ほわほわしてて言うタイミングとか人とずれてて、なんだか可愛い。
でも、たまにどきりとするようなことを笑顔でさらっと言うんだ。
「むしろ生まれたときからの腐れ縁で、見るのも飽きるくらいですけどねェ」
「俺のかっこいい顔を見てそんなこという?」
「鏡貸してやるから、ちょっと今の言葉訂正しろ」
「上等だこの野郎」
胸ポケットから鏡を出してやろうとすると、瀬尾はそもっそいキメ顔で鏡を見始める。
キモい。
その一言に尽きる。
もう何年もの付き合いにもなれば、ノリツッコミもお手の物だ。
瀬尾こと、瀬尾恭也は結城家のお隣さんで、親ぐるみで仲のいい幼なじみ。
ちっさいころから遊んでて、幼稚園も小学校も中学校もおんなじクラス。むしろ高校もおんなじクラス。
ずっーとおんなじで。
むしろあいつがいないと神様の悪戯じゃないかと疑うくらい。