佐藤くんは甘くない
私たちは訳もなく、この微妙な空気にもじもじしていると、
「───おーっす!!」
ベストタイミングで瀬尾がひょこっと顔を出した。
「おっそい、お前は女子か瀬尾」
私ははあ、と安心から出たため息を漏らして、そういうと瀬尾は小ばかにしたような口調で、
「はァン?女子らしからぬやつに言われるとは思わなんだ」
「近寄るな、女子がうつる」
「お前は女子じゃないのかよ」
「さ、帰りましょう佐藤くん」
「うん」
「ちょっ、ま、待って……!!」
私たちは瀬尾が慌てて後ろからついてくるのを見て、私がくすくす笑うと、佐藤くんもつられて小さく笑う。
私は、その笑顔に一瞬だけ、どきりとして。
こっちに気づいた佐藤くんが、呆けた顔で私を見る。目があって、私は慌てて逸らした。だめだ、これは、なんだかだめだ。
「───はあ、お前らちょっと俺の扱い適当になってきてるよな」
「もともと、こんな感じだって」
「結城に関してはな!」
「そりゃァ、何年も幼馴染やってたら面倒になることだって、くっしゅっ……!」
「うわ、お前こっち向いてくしゃみすんなよ、アホ」
ずびーっと私が鼻をすすると、女子力の高い瀬尾、ポケットからティッシュを取り出すと、ほらちーんしなさい、ちーんと、私にティッシュを当てた。