佐藤くんは甘くない
「うーちーん……っ!」
「うんちみたいに言うな、女子だろうが」
「うーんーちー」
「もうやだこの幼なじみ」
なんだかんだ言って、瀬尾がかみ終わったティッシュを近くのゴミ箱に捨てに行く。
私はその後ろ姿をぼーっと眺めていると、いきなり私の視界が真っ黒になる。
「うーがーっ」
なんだこれっ……!
私は慌てて、自分の視界を真っ黒にした正体を頭からとってみる。普通に黒のパーカだった。ん?これなんか、見た気がするんだけど。
ああ、そうだこれ。瀬尾の奴。
でも、これって佐藤くんの着替え用で渡した奴じゃ、と思って顔あげると、佐藤くんが私をむすっとした表情で見下ろしている。
「寒いくせに、外で待ったりするから、そうなるんだよ。ばぁーか」
「でも瀬尾が、」
「うっさい」
佐藤くんが私の手からパーカーを指さすと、
「いいから。黙ってさっさと着て」
「……」
じっと、佐藤くんの顔を見る。佐藤くんがみるみる内に顔が赤くなっていく。眉を寄せながら、そんな険しい顔で真っ赤な顔されても、効果ないよ佐藤くん。