佐藤くんは甘くない
「……ありがと」
私は、貸してもらったパーカーに袖を通して、小さく笑う。
佐藤くんは、いつもみたいにふいっとそっぽを向いて、
「何のこと」
と、視線をきょろきょろさせながら、そういうのだった。
「───帰りに何か買ってくか~!」
ゴミを捨てて戻ってきた瀬尾が、そういって、私たちの間に入った。
一瞬、私の着ているパーカーを見て、ぴくっと口の端が動く。けれど、何も言わなかった。そうして、佐藤くんを一度だけ見て、瀬尾は不安そうな表情を浮かべた。
気のせいかな、と思ってもう一度見上げた瀬尾の表情はいつもと同じ。
「瀬尾のおごり?」
「散々待たされたから、高いの」
「お前ら容赦ねえな」
私たちは、肩を並べて小さく笑いあった。
こんな時間が、いつまでも続けばいいって思いながら。