佐藤くんは甘くない
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いったん部屋に戻った私は、取りあえず髪を整えて、朝ご飯を食べた。
お母さんに、恭也くんにお礼をいって渡しておいて、と手作りのジャムを手渡された。もう、いい加減瀬尾のことを恭也くんって呼ぶのやめてよ、というとお母さんは苦笑いするだけだった。
もう一度部屋に戻ると、瀬尾の部屋にはカーテンがかかっていた。どうやら、向こうもお着替え中らしい。
「……さて」
私もしゃーっとカーテンを閉めて、クローゼットを開けた。
ファッションにそれほど、こだわりがあるわけでも、ましてそこまで遠出するわけでもないので、私は黒のショートパンツとお気に入りの襟付きの白シャツ、淡い藍色のカーディガンを羽織る。
「……メイクは、まあいっか」
今回の主役はあくまで、佐藤くんとひまりちゃん。
さて、と。
私は自分の勉強用具をバックに詰め込んで、外へ出た。