佐藤くんは甘くない
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「私、佐藤くんに少しだけ言っていないことがあるんです」
がたん。
電車が大きく揺れる。
特に佐藤くんからの反応がなくて、私はちらりと横目で彼を見る。そして、目が合った。
別段驚いた様子もなく、ただ佐藤くんが私の方を見ていたから。
「……何?」
その声は、初めて出会った時よりも穏やかで優しい声だった。
それを聞いて、ああ、佐藤くんはきっと乗り越えていける。そう、確信した。
これから、きっと、辛いことがあろうとも。
どんな苦しいことが、待ち受けていても。
きっと、佐藤くんなら越えられるだろう、と。
「11枚の中で、3枚に花のアクセサリが入っていたことを覚えていますか」
「……うん」
3年前。
そう、それを当てはめるだけのピースは、もう揃っていた。
佐藤くんのお母さん、早苗さんが亡くなる前に───薫さんに手紙を渡した。
それだけで、もう答えは出ていた。
あの手紙に、アクセサリを入れたのは、他でもない、薫さんだということ。