佐藤くんは甘くない
それにびっくりしたのか、びくっと肩を震わせて伏せていた顔を、あげた。
「私の手、握ってください」
佐藤くんが、少しだけ目を見開いて、そして私の言っている意味を理解したのか───揺れ動いていた瞳が、私を捉える。
小さく、息を吐いた。
肩に力が入っているのか、動きがぎこちない。
なぜか、私まで緊張してしまう。
それを佐藤くんに見られたくなくて、私はぎゅっと目をつむる。
───そして、私の手のひらに温かなぬくもりが伝わる。
ああ、馬鹿だ私。
こんなところで、泣くべきじゃあないのに。
馬鹿みたいに、声が震える。肩が、心が震える。
私は、ゆっくりと瞼を開けて───私を見つめる、佐藤くんに微笑んだ。
「もう、大丈夫ですね」
「うん」
その手のひらは、次第に熱くなっていく。どちらともなく、指を絡ませて、強く握りしめた。
「……良かった」
「ありがとう、結城。
結城がいなかったら、たぶん、俺は何も変われなかった」
馬鹿、佐藤くん。
そんなこと言われたら、泣いてしまうじゃないか。