佐藤くんは甘くない
佐藤くんはどうやら、少し冷静を取り戻したらしい。
小さくため息をついた後、大人しく席に座った。
「分かった。せっかく協力してくれるんだから、俺も頑張る」
「その意気ですよ、佐藤くん!」
「その代り……、うまく喋れなかったら、手助け、してよ」
そういいながら、いじけたように佐藤くんがふいっと顔をそらしてしまう。
佐藤くんが可愛すぎて、鼻血が出そうになるどうしてくれる。
「ともあれ!明日のことは明日のことです。今日はとりあえず帰って明日に備えることが大切ッス」
「うん」
佐藤くんが頷きながら、立ち上がった。さて、私も。
ゆっくり立ち上がって、横にずれようとしたその時。
───ガタンッ!!
「わあ、あ、とと、」
ふらっと、身体の軸がぶれる。
あー、椅子の足に自分の足引っ掻けて転ぶとか、私はひまりちゃんかと冷静になりながら、私の体がゆっくり倒れていく───が、
「───っっ、」
一瞬、視界いっぱいに真っ青な顔をした佐藤くんが目を見開いているのが、見えた。
ちょうど佐藤くんが隣にやってきたときに、こけてしまった私はなんてタイミングが悪いんだろう。
なぜなら、この行動で佐藤くんの最大の秘密を知ることになるのだから。