佐藤くんは甘くない
そんな情けないところを見られたくなくて、私は、
「じゃあ、ここで」
繋がれていた手を、絡めていた指をゆっくりと離して、踵をかえそうとした、その時。
「───待って」
ぎゅっと、手を握りしめられる。
進めようとしていた、足が止まる。ゆっくりと、振り返ると───その先で、一度も見たことのないような、優しげな笑みを浮かべた佐藤くんが、いた。
「……佐藤、くん?」
「名探偵の結城でも、分からなかったこと、一つだけ教えてあげる」
「……え?」
佐藤くんは、ぎゅっと手を握りしめた。
顔を伏せて、それから頬も、耳も、真っ赤にさせてそれでも、佐藤くんが笑いながら言った。