佐藤くんは甘くない
瀬尾が私のほうに視線を向ける。
おっといけねえ。
忘れるところだった。
私は、ポケットに手を突っ込んでそれを取り出すと、
「夏祭り、行きましょう!!」
ばんっと、机に叩きつけた。
佐藤くんが興味なさげに、私がたたきつけたそれ───〝今年も熱い夏がやってくる!!〟とでかでか書かれた広告を見る。
「……」
佐藤くん、行きたくないって言わないだけ成長したけど、顔に出てるから。物凄く出てるから。
「ま、まあちょっと私の話を聞いてくださいッス。
テストも終わって、もうすぐ夏休みじゃないですか」
「……まあ」
瀬尾が頷く。
じめじめとした6月が終わり、いつの間にやら7月も後半。窓の外は勢い余った太陽の光がバンバン指していて、外を見るだけでやる気が削がれそうだ。