佐藤くんは甘くない


「だけど、困ったことに」

「困ったことに?」


怪訝な顔で、佐藤くんがやる気なく伏せていた顔をふいっとあげる。


「───夏休みに、ひまりちゃんと一度も会う予定がないんですよ!!」



「な、何だってっ!?」


がたっと、勢い余って椅子もひっくり返しそうになる瀬尾。


……そう。

なんやかんや、私たちが実際にひまりちゃんと佐藤くんの接点を持たせるように行動したのは、私の勉強を教える名目でやった勉強会のみ。


「私の予定ではもうすでに佐藤くんがひまりちゃんに告白して、バカップルぶりを発揮してるくらいだったんですけど」


「……何言ってんの馬鹿じゃないの?」


「今ちょっと想像しましたよね佐藤くん?」


「しっ、してないし!馬鹿じゃないの?うざいっ、近寄んな死ね!!」


あんまりに佐藤くんが顔を真っ赤にして否定するものだから、思わずからかいたくなってしまった。

今はそんなことをしている余裕はないのだ。


< 385 / 776 >

この作品をシェア

pagetop