佐藤くんは甘くない


そして、眉を寄せながら佐藤くんが頭を抱えて、

「あー……瀬尾が誘うの?」

恐る恐ると言った感じで聞いてくる。


「違います」

「じゃあ誰が誘うわけ」


だんだんと佐藤くんの腰が引けていくのが見て取れる。

分かっているくせに、信じたくないのか聞きたくないのか、物凄い険しい顔である。

私は、あはははと爽快に笑い飛ばして、その顔に───びしっと人差し指を突き立てた。



「もちろん、佐藤くんです!!」



「俺佐藤じゃないんで斉藤なんで」

「痛い痛い痛いっ!!人差し指っ、変な方向曲がるからっ、ヘルプ!瀬尾ヘルプ!佐藤くんが暴行してるんですけど!!」

「こらダメだろ、斉藤」

「そこで乗るな私を助けろよっ!!」


痛さのあまり絶叫すると、佐藤くんが面倒くさくなったのか、私が指さしていた人差し指を握る手を弱めて、


「……なんで、俺が」


と弱気な声で、言った。


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