佐藤くんは甘くない
一瞬、何が起こったのか理解できなくて私は呆然と、彼を見る。
ただ分かったのは───差し伸べた手を、佐藤くんによって跳ね返されたということだけ。
「……さ、とうくん?」
窺うような声音で、私は彼の名を呼んだ。
まるで何かにおびえるように、肩を震わせていた。明らかに、さっき倒れ込んだときに頭を打ったとかじゃなくて───まるで。
「佐藤、くん」
私がもう一度名前を呼ぶと、佐藤くんははっと我に返ったように私を見た。
その目は、恐怖で震えて───まるで、私を〝敵〟として見ているようで。
「もしかして───佐藤くん」
「……」
「佐藤くんは───女の子が、嫌いなの……?」
そう、佐藤那月くんがクラスメイトと話さなかった理由。
そして、ひまりちゃんと話すことができなかった理由。
それは───佐藤くんが、女嫌いだったから。