佐藤くんは甘くない



……………………ん?


んー…………と。






ん?



私は、恐る恐るきつく閉じた瞼を開けて───目の前の佐藤くんを、見た。

佐藤くんは、じっと私の瞳を覗き込んだまま、無言だ。


「……今、なんと」

「…………何度も、言わせないで」


ふいに、弱気な声音で佐藤くんが私を見上げる。そして気まずそうに、ばっと顔を逸らす。その耳はこれでもかというくらい赤く染まっていた。



「恥ずかしい、から」


ぎゅううっと、胸が締めつめられる。なんだ、なんなんだこの子の可愛さは神か、これが神なのか。いや、でも落ち着こう私。

だって、今佐藤くん……なんて言った?


佐藤くんは、しばらくもごもご口を動かした後、


「……だから、ゼリー好き」


その言葉を咀嚼するように、言った。


< 407 / 776 >

この作品をシェア

pagetop