佐藤くんは甘くない
「は、はあ。ゼリーですか?私も好きですよ、瀬尾はプリンの方が美味しいとか言いやがるので、瀬尾家と結城家で統計を取るほどで、」
「───違う」
佐藤くんに遮られる。
ゼリーが好きだなんていきなり言われても、どう反応していいのか正解が分からない。
けれど、私の返しが正解ではなかったことは確かだ。
「覚えて、る?」
「……何がッスか?」
ぎゅっと、絡めた手のひらが強くなる。佐藤くんは恥ずかしそうに私から視線を逸らして、ぐっと唇を噛みしめる。
その表情が何とも言えないくらい可憐で───私は、一瞬言葉を失いそうになる。きっと、言ったら怒るだろうから、言えないけれど、佐藤くんがオトコノヒトに見えて心がぐらつきそうだった。
「あの日、俺が……風邪で寝込んだとき」
「……」
風邪で……?
頭の中で考える。そうだ、そんなこともあった。ひまりちゃんとの勉強会の後、いろいろあって佐藤くんは寝込んでしまった。でも、それが一体どうしたんだろう。
いまだに佐藤くんの反応が掴めないことが、分かったのか───佐藤くんは、小さくため息をついた後そっと私の顔を見上げながら、言った。