佐藤くんは甘くない
「結城が、帰ろうとしたとき……引き留めた、でしょ」
「……あ、ああそうですね」
確か、一度帰ろうとしたときの話だろう。
そう。
かすかな記憶を頼りに思い出す。帰りますと、言った後私がドアノブに手を伸ばして───、佐藤くんは言った。
『ゼリー、あんまり好きじゃない、から、片付けてって』
………………あれ?
でも、今、佐藤くんゼリー好きだって言ってたよね?
んんん?
どういうこと?いきなり佐藤くん、ゼリーが好きになったの?
頭の中で、ぐるぐる思考を巡らせる。が、いっこうに結論らしい結論が出てこない。そんな私の頭上から、声が降りかかってくる。
「……ここまで言って、分かんないの?」
「佐藤くんがいきなりゼリー好きになったって、ことですか?」
顔を上げる。うわ、違うらしい。佐藤くんの眉間にしわが寄っている。か、可愛い顔が台無しっすよ。