佐藤くんは甘くない


瀬尾とひまりちゃんが前で、どんな花火が好きかを真面目に談義しているのを片耳で聞きながら、とぼとぼついてくる佐藤くんにこっそり耳打ちした。


「ひまりちゃんに可愛いって言わなくて良かったんスか?」


「っっ、」


ばっと、佐藤くんが私から離れる。

そして、何か言いたそうに口をもごもご動かすけれど、


「……どーもすいませんね、素直じゃなくて」


頼りなくそう反論すると、ふいっと向こうを向いてしまった。ああ、もう。可愛い奴め。


「ありゃ、はたから見たらバレバレッスよ」

「……うるさいな」

「ま、ひまりちゃんはきっと気づかないでしょうけど」

「ほんと、今日だけはその鈍感さに感謝してる」


はあ、とため息をつきながら佐藤くんがおでこに手を当てる。

そして、数歩前に歩くひまりちゃんの背中をちらりと見て、ぶっきらぼうに視線を外すと、


「……あんなの、破壊力すごすぎ……」


上ずった声でそういうと、はっと我に返ったように私の方を見る。


へっへっへ、佐藤くんの本音頂やした!!

にやにやが隠しきれず、口元に手を押しあてながらこれ見よがしに笑ってやる。


「佐藤くんはほんと好きですよねぇ」

「……うっさいな」


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