佐藤くんは甘くない


「そういえば、さっき物凄い不機嫌でしたけどどうしたんスか?」

「……ああ」


佐藤くんが途端に不機嫌な表情をあらわにする。

そして、思い出したくもないとでもいう口調で、


「あそこで結城たちがくるの待ってたら、話しかけられた」

「ナンパですか?」


佐藤くんの言葉に、私は思わず食い気味に問いかけてしまった。


なんせ、随分前にも佐藤くんはお姉さまに声を掛けられたことがあるからだ。女嫌いも緩和されたけれど、あんまり知らない女の人から話しかけられるのは慣れてないから。


すると、佐藤くんはそんな私のことを察したのか、

「違う」

と否定してきた。


「違う。……ナンパだったけど、女じゃない」

「は?」

「…………男にされた」







…………私は、一体なんて言えばいいんだろう。




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