佐藤くんは甘くない


朝比奈さんは、うう、と恥ずかしそうに呻いた後、ばっと片手を開いて突き出すと、


「せっ、拙者の不注意ですまぬことをしたなゆっ、ゆるせ!」

「俺も、ごめん」

「私方こそ……!え、ええっと……」


だんだん弱気になっていくのが、見ていても分かる。

そして、突き出した片手を抱えるように抱きしめながら、ちらりと俺を見上げて、目が合ったと思ったらばっとそのまま逸らされてしまった。


どう、しよう。

嫌われたかも。


思えば思うほど、自分の失態に腹が立ってくる。……ああ、もうもっとうまいやり方なかったの俺は。

頭を抱えて今すぐ逃げ出したい本能を押さえて、唇を噛みしめていると、ふいにか細い声が呼びかける。

「あ、の、ね」


おずおず、彼女が俺の方に近付くと、なぜか巾着のひもの片方を俺に差し出す。


「は、はぐれたら困ると思うで、ござんす。

 ……なので、片方、持ってくださらぬか」



やばい。


心臓が、止まりそう。


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