佐藤くんは甘くない


それが?


お前のそのせいで私は、自分に告白されるんだと思って、

女子トイレの鏡の前で何度自分の顔を確認するなんて、今思い出すだけ恥ずかしい思いをしたっていうのに!!


「……瀬尾のせいで私は、佐藤くんに告白される羽目になったんだけども」


「は!?佐藤が!?」


きいーん、と耳の奥から金属音が響き渡る。


いきなり大声出すな。

ご近所さんに迷惑だろうが。

これだから私と瀬尾んちが悪魔の巣窟だとか、ご近所に評判が回るんだ!


瀬尾はこれまた珍しく焦ったように、


「あ、あーっと、佐藤が、ハ、結城を好きだってこと……?」


髪をくしゃっと、しながら苦しそうにそう言う。



しばらく、私たちの間に無言の圧力がかかる。


そして、一番初めに口を開いたのは───


「はは、瀬尾。冗談は顔だけにしろよ」



───言うまでもなく、佐藤くんである。


しかしなぜカタコト。そして真顔。目が真っ黒なんですが。


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