佐藤くんは甘くない
───ドン!!
後ろの方から、大きな爆発音が聞こえた。
わああ、と周りの歓声が遅れて上がる。私も、周りの人たちと同じように振り返ると、夜空に明るい光が一瞬あたりを明るく照らす。
「……花火だ」
そっか、もう花火の時間だったのか。
通りで、屋台の人ごみが少しだけ薄れたと思った。
確かにこの木々が映えたこの位置からだと、人も多いせいかあんまり綺麗に花火が見えない。きっと、みんな移動していったんだろう。
「んー、見えないー」
ギリギリまで背伸びしてみるけれど、やっぱり人が邪魔でうまいように見えない。
「ったく、しょうがねえなぁ。結城、こっち」
「は?なにが、って、こら瀬尾っ」
いきなり私の手を引っ張ったかと思うと、ずんずん花火が見えそうな通りの逆、私たちがさっきいた茂みの方へ歩いて行く。