佐藤くんは甘くない


自分で言っていて、何言ってんだろうと思った。

でも、正直にそう思ったんだ。


私は、瀬尾の表情を窺うこともしないで、ドン、ドン、と打ちあがる花火を見上げたまま続ける。


「なんかさーこう、長年手をこまねいて育ててきた近所の悪がきが、引っ越ししちゃう、みたいな。あ、丹精込めて育てて、懐いてくれた子猫がいつの間にか家出しちゃったとか……そういう感じ」


「ふうん」


「なんか、佐藤くんも変わっちゃうんだなぁー、このままじゃいられないんだなぁーって、寂しくなったんだ」



なんだか、このまま4人、なんやかんやあってぎゃあぎゃあ騒ぎながら、こんな日が続くんじゃないかって思っていた。


でも、違うんだ。

このままじゃいられない。


いつかは、変わっていく。


佐藤くんともきっと、今までの楽しい関係じゃいられなくなる日が来る。


そう思ったら、なんだか少しだけ淋しくなってしまった。




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