佐藤くんは甘くない
「瀬尾は、さ」
そっと、言葉に出す。
この言葉が、花火にかき消されて消えちゃえばいいのに。
そう思うのに、それでも私は言葉を続けてしまう。
「───瀬尾は、変わらないよね?」
このままで、このままずっとこれから先も。
何も、変わらないままで。
「そんなの、無理だよ」
「……え?」
声が、漏れた。
振り返ると、そこには───頼りなく、花火の光に照らされて辛そうに目を細める瀬尾の姿が、あった。
「このまま、は嫌だ」
「瀬尾?」
「だって、そうしたら───俺は、お前が誰かに掻っ攫われるのを黙ってみてることしかできなくなる」
「……」
「そんなの、真っ平御免だよ」
だんだん、早口になっていく。
瀬尾は、私の肩を強く掴むとすっと私の瞳を覗き込んでくる。バン、最悪のタイミングでもう一度花火が上がる。