佐藤くんは甘くない






「だって俺は───」





花火のせいで、瀬尾の表情があらわになる。


そこにあったのは、どうしようもなく今にも、泣きそうな顔だった。


〝あの時〟と重なる。

鳴り響く雷の音、劈くような雨の打ち付ける音、白い病室、動かないからだ、そして───私の目の前で頭を下げる瀬尾の姿。肩が震えていた、何度も、何度も、何度も、何度も、謝り続けている声。




そして、瀬尾は口を開いて───










「───瀬尾!!」





ばっと、思わず私は瀬尾の口を両手で塞ぐ。





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