佐藤くんは甘くない


そっと、自分の手を乗せるとぐっと引き上げる───いたっ!!


「っっ、」

思わず足首を押さえて、唇を噛みしめる。


「どしたっ?足痛めた?」

「いーたーっ、死ぬっ」

「そんなこと言ってるうちは死なねえよ」


慌ててしゃがみで、私の足を掴んだ瀬尾がジト目でそういう。まったく、きみけが人に対しての礼儀がなってないだろ。

むすっと、口を尖らせながらそっぽ向くと、


「あーこれ靴擦れだな、普段履きなれないもの履くから」


そういいながら、ぽんぽん私の頭を叩きやがる。


「なにさ、浴衣にスニーカーでも履けって言うの瀬尾は」

「はいはい、分かった分かった」


適当にあしらうみたいに、うんうん頷いて、瀬尾が私にしゃがみこんだまま背を向けた。


「なに」

「そのままじゃ歩けないだろ、おぶってく」

「は?死んでも無理」

「じゃ、ここで一人で待ってんだな」

「ぎゃー!貴様それでも長年連れ添った幼なじみかっ」


本当に立ち上がって、行こうとする瀬尾のTシャツを掴んで何とか引き留める。

これ見よがしに大きくため息をつくと、もう一度しゃがみこんで、


「大人しく掴まってろよ」


そういうのだった。





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