佐藤くんは甘くない
いい加減、この体勢を見られていることが恥ずかしかった。
「……ええっとデスネ、私も瀬尾もこの状況なんで。
佐藤くん、ひまりちゃんを送って行ってあげてください」
「はっ?」
佐藤くんがいきなり、目を見開く。
なんで俺が、というよりもそんなの絶対無理だからとでもいいたげなは?だった。
「もう夜も暗いですし、この夜道をひとりで歩くのはさすがにダメでしょう」
「……まあ、そう、だけど」
いまだに渋って、恥ずかしそうにする佐藤くん。
仕方ないなぁ。
私は瀬尾の肩を叩いて、佐藤くんに近寄ってもらうように合図する。それにすぐ気付いた瀬尾は、そそっと佐藤くんの隣まで移動してくれた。
こっそり、ひまりちゃんには聞こえないように佐藤くんに耳打ちする。
「巾着の紐、握り合あえる二人ならきっと大丈夫ッスよ」
「───っっ……!!」
ばっと、佐藤くんが後ずさる。
この暗さでも分かるくらい顔が真っ赤だ。あう、と口を動かしてそれから、悔しそうに私を睨みつけると、
「あ、朝比奈さん……、送ってく」
ちょっぴりぎこちなく、そういうと、二人は私たちとは逆方向に消えて行ってしまった。