佐藤くんは甘くない
佐藤くんとカミナリ
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夏休みも終わり、始業式を迎えた9月。
私は、職員室にいた。
通りすがる先生たちの居心地の悪い視線を一身に浴びながら、私は前で組んだ手に力を入れる。
私の目の前で座る、担任の先生は、ほぼ日本列島並みしかない頭を掻きながら、私に睨みをきかせる。
「なんで呼び出されたかは分かるな」
「……重々承知です」
「アホだろ、お前」
先生がぴらりと一枚の紙を取り出した───そこには、夏休み総復習プリントと書かれてあった。
じっとそれを見て、苦笑しながら顔を上げると、先生があきれ返った顔で私を見ていた。言わんとしていることは、その表情からもろに分かる。
「まあ、夏休みを満喫して楽しかったのは分かる。先生も良くやっちまったよ。始業式の前日になってまだやってない宿題に焦ったことあるからな」
「だから禿げたんですか」
「黙れこれは別の理由だ。それで、ちょうどよくやってる友達のプリント写さしてもらってな。先生も鬼じゃない、お前の目のくまから察するに徹夜でやったんだろ」
「……」
「だがな、結城」
ばんと、机を叩いて───それから、そのプリントを私の顔に叩きつけるように突き出して叫んだ。
「───誰が、名前まで写せと言ったっっ!!」