佐藤くんは甘くない


そして、一枚の用紙を私に差し出すと、言った。



「じゃ、ここに名前書いて吉原先生のところに渡しに行ってね」


「……」


無言で見下ろす。

そこには、『文化祭実行委員、補充について』と書かれた紙があった。


補充?

見慣れない言葉に、目を細めると先生が困った、というように小さくため息をついてしょんぼり語り始める。


「実はさ、夏休みに入る前に実行委員決めたじゃん」

「……ああ、決めましたね」


少しだけ返事が遅れる。

確かに、夏休みはいる直前、実行委員は夏休み期間に準備することがあるからと決めたことを思い出す。


「実行委員になってくれた、稲垣さん、体調不良でしばらく休むって連絡あってさ」

「……」

「だから、そのーもう一人実行委員がいるとは言え、大変だから先生たちの間で話し合って臨時で、補佐してくれる人を入れようって」

「あー……理解はしました。先生、私を嵌めましたね!?」

「嵌めてないって、それにほらお前文化祭実行委員決めるとき真っ先に推薦しただろ。先生は覚えてるぞ、とても責任感の強い奴なのできっと責務を果たせると思います。そんな彼を私も支えていきたいですって」



……あれ、私そんなこと言ったっけ。



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