佐藤くんは甘くない


「さ、佐藤くん大丈夫?」

「結城、助けて」

「は?」


佐藤くんが、すっと前を指さす。つられてそちらに視線を向ける。そして私はその異様な光景に絶句した。








教室のドアの向こう側にゾンビが立っていた。

無数のゾンビ。



……ではなく、たくさんの女子たちがわんさか教室のドアの前に仁王立ちでなぜか両手を掲げてくわーっと狼のように歯を向いていた。


ええっと、何だろうこの状況。


ゾンビごっこ?


異様な光景に戸惑って、言葉を失った私にすぐ近くにいた黒髪長髪が特徴の吉田さんが声を上げる。


「結城、そこを退きなさない」

「え?」

「佐藤くん、君はすでに包囲されている」

「そうだよ包囲されているー」


思わずほめたくなるような連携プレイで、包囲されているーとウエーブのように無数の声が聞こえてくる。うわあ、これ完璧悪役だよ。



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