佐藤くんは甘くない


いまだに私の制服の裾を離そうとしない佐藤くんを振り返る。


「えっと、この状況は」


私がそう聞くと、佐藤くんは一度うっと言葉を詰まらせる。

そして、恥ずかしそうに目を潤ませながらぽつぽつと、言った。

「……さっき、くじで劇の役決めたら、王子役引き当てちゃって。それで、衣装のサイズ測るからってアイツら襲ってきた」


女子たちが少し動くだけで、佐藤くんがびくっと肩を震わせる。確かにこれは怖い。よく頑張ったね佐藤くん。

なんとなく、涙目になる佐藤くんが可愛くてよしよし撫でてやると、子供扱いすんなと怒った。でも、止めはしなかった。何それ可愛い。



「ちなみにその劇なんて題ですか?」

「腹黒姫とすっごいやる気ない小人」

「驚きの純ブラック100%!!」


完全なるネタだよねそれ。

タイトルから滲みでるクソ劇臭が半端じゃあないよそれ。


思わず顔を顰めて、この状況をどう打破しようと考えた、その時。




「───あーこらこら、佐藤が怖がるだろうが」





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