佐藤くんは甘くない
女子たちをかき分けて、にょんっと顔を出したのは瀬尾だった。
そして私と佐藤くんを隠すみたいに、目の前に立つと、
「大体、衣装の寸法測るためにそんないらねえだろうが」
「えーいいじゃん、私たちも佐藤くんといろいろおしゃべりとかしたいしぃ」
「佐藤くんの体いろいろ調べたしぃ」
ぶーぶーと、女子たちから非難の声が上がる。
その声と比例するように、私にしがみつく佐藤くんの顔色もだんだん青ざめていく。怖い、確かに想像しただけで怖いね。可哀そうになり、私はひたすらに佐藤くんの頭を撫でてあげる。
瀬尾は、困ったようにあーと声を漏らす。
そして、なぜかちらっと私の顔を窺った後、女子たちに向かって言った。
「んじゃ、佐藤に決めてもらえばいいだろ。こんなかで一人、サイズ測るやつ決めてもらえば」
お、おお!
思わず心の中で歓声が上がる。
なるほど、瀬尾やるじゃんっ。これならひまりちゃんと一対一で話ができる!
頭を撫でていた手を止めて、とんとんと興奮気味に肩を叩くと、佐藤くんもそれを悟ったのか私の顔を見上げるとばっといきなり顔を赤らめる。
そりゃこんな大衆の前でひまりちゃんを指名するなんて、相当勇気のいることかもしれないけどっ。