佐藤くんは甘くない


結城は驚くほどの回復力を見せた。3週間を過ぎるころには落ち着いて話ができるくらいに。

俺は毎日毎日欠かさず、あいつのお見舞いに行った。


それで、あいつはまっさきに部活のみんなのことを聞いたよ。だから俺は些細な変化もあいつにつたえた。あいつはそれを聞いて安心したように笑ってた。


その笑顔が、心に突き刺さった。

もし俺をかばったりしなかったら、結城はいまでも元気にコートを走り回ってたのにって。




……だから、俺は、思わず言っちゃったんだ。


大切にしてた大会なのに、お前から奪ってごめんなって。あいつは、しばらく何も言わなかった。でも、屈託なくさ満点の笑みで言うんだよ。



たぶん、私はこうなる未来が分かってても、きっと同じことをしたって。


何度繰り返される羽目になっても、きっと同じことをしたって。




その言葉を聞いて誓ったんだ。

……必ず、結城の分もコートでシュートを決めるって。だから俺はいつも以上に練習に打ち込んだんだ。それだたった一つあいつにできる償いだって、信じて。




大会の前日に、結城に逢いに行った。


あいつは頑張れって、まっさきに私に結果を言いに来てって俺の胸に小さくパンチした。聞いたら、あいつも医者からリハビリの結果を聞かされるんだって。


最近調子いいからきっと、すぐコートに戻れるよって。


高校入ったら今まで以上に頑張ろうって。指切りげんまんして、その日別れたんだ。








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