佐藤くんは甘くない
「で、でも私そういうの、まだ分かんないしっ」
慌てて顔を逸らしながら、言葉を探る。
「逢ってばっかりだしっ、佐藤くんのこと何にも知らないしっ」
「時間とか、関係あるの?」
すうっと、佐藤くんの切ない声が耳に響いてくる。
閉じていた瞳をうっすら開けて、見てみると制服の胸あたりをぎゅうっと握りしめて、顔を伏せたまま佐藤くんが言った。
「すきに、なったんだよ。どうしようもないくらい」
「……さ、とうく、」
私、ちょっと言い過ぎたかも。……佐藤くんは、私のことが好きでこうやって必死に思いを伝えてくれたのに。
「あの、佐藤くん。私、」
そういって、彼に手を伸ばしたその時。
「───すきなんだ」
ばっと、彼が顔を上げて、言った。