佐藤くんは甘くない
病室を出てしばらく歩いてたら、ちょうど待合室の椅子に座ってるおばさんを見つけたんだ。…………でも、様子が変だった。
泣いてんの。
声を押し殺して、肩を震わせながら、ずっと。
嫌な予感がした。
こういう時の予感って、だいたい当たるんだ。俺はおばさんに近寄って、目の前に立った。そうしたらさ、すうって顔を上げてまたぼろぼろ泣き始めた。
どうしたんですかって、聞いたら途切れ途切れで答えてくれた。
俺はさ、知らなかったんだ。
───もう、ハルが一生バスケできないんだって。