佐藤くんは甘くない
肩が、左肩が上がらないんだって。
日常生活には問題ないだろうけど、もう前みたいにバスケすることはできないんだって。手術しても、治らないんだって。リハビリしても、もう、治らないんだって。
もう、あいつはバスケができないんだ。
そう聞かされて、俺は頭が真っ白になった。そんなこと、あの事故があったとき以来だった。思わず走ったよ、あいつの病室に。それで、初めは問いつめてやろうと思ったんだ。おばさんが知ってたってことはもうハルは聞かされてたんだ、なのに言わなかった。
でも、病室のドアの前までやってきて。
………………そんなこと、できなかった。
声が聞こえた。
泣き叫ぶ声だった。
嫌だ、嫌だって。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと……っ、泣きじゃくってた。もっとやりたいよ、なんで動かないの、なんでなんで、嫌だいやだって。
何も言えなくて、何も声が出せなくて───ただ、声を押し殺して泣くことしか出なかった。
俺は、知らなかったんだ。
あの事故で守られた癖に、また、俺が自分に気を遣わせないようにって嘘をついて。
それで、俺を守ってくれてたことを。
俺は、奪ってばかりだった。
あいつから何もかも、奪ってそれでもなお傷つけたんだ。高校でもバスケ頑張ろうだなんて、あいつの傷を抉るような言葉を吐いて。