佐藤くんは甘くない
どうして、佐藤くんがそんなことを聞く?
思い当たる節は一つしかなかった。
昨日、私が倒れたことを知ってるのは保健の先生と、お母さんと、瀬尾だけのはず。なら、なんで佐藤くんは私にそんなことを聞く?
頭に、情景が霞んだ。
それは、そう。
真っ暗な廊下。
そして響く足音。
足音は一人だけだった。私の視線がやけに高くて───ああ、そうだ背負われていたから。ほっと安心するような温かさがその背中にはあった。
私はただぼうっと、その背中に身を寄せて首にまわした腕に力を入れた。
それから、私は。
佐藤くんが、それまで合わせなかった視線をすっとあげて、私を射抜くような真っ直ぐな瞳で見つめる。
それから、私は。
「一つだけ、聞いてもいい」
……そうだ、言った。言ってしまった。
「───結城は、瀬尾のことが好き、なの」