佐藤くんは甘くない
ばちん、と破裂するような音が聞こえた。
私の体は、そのまま吹っ飛ばされてがたん!と机にぶつかる音が続いてやってくる。何とか、倒れるのは免れた。
一瞬、何が起こったのか理解できなくて私は頬を押さえながら顔を上げる。口元を押さえて、小さく悲鳴を上げる女子たち。そして、呆然と立ち尽くす男子たち。
強烈な既視感が襲ってくる。前にも、こんなことあったっけ。
ああ、そうだ。思い出した。
ひまりちゃんたちと勉強会をした帰り───ひまりちゃんをかばって、私は佐藤くんに殴られたんだっけ。
佐藤くんが、振り下ろした手をゆっくりと戻して、そのまま私に近づいてくる。そして有無を言わさず、私の襟首に掴みかかるとぐっと引き寄せてくる。
「───臆病者」
腹の底から唸るように、佐藤くんがそういった。射抜かれるような視線は、今にも私をかみ殺しそうな勢いだ。
「……あ、はは。突然やってきて、何で私殴られてるんですか」
こんなことが言いたいわけじゃないのに。
皮肉めいた口調が、零れ落ちていく。