佐藤くんは甘くない
そんな私の態度がますます佐藤くんの怒りを煽ってしまったのか、佐藤くんは掴みかかった私の襟をぐいぐい引っ張って、揺らす。
「───何で、何で逃げるんだよ!」
「……何が」
「あんたは瀬尾が好きだって知ってるはずなのに、それなのに知らないふりしてずっと逃げてる!」
「佐藤くんには、関係ない」
「っっ、ある!」
ぐらりと視界が揺れた。
佐藤くんが、私の体を何度も何度揺さぶる。
「言った、俺は言ったよ!あんたがどうしようもなく困ったとき、俺を真っ先に頼ってって!それが今なんだよ!!」
───そう、だった。
ああ、そうだった。
確かに、佐藤くんは言った。風邪で寝込んだ佐藤くんが、私に確かに言った。真っ先に言って、じゃないと怒るって。
訳もなく視界が滲んでいく。
泣くな、泣くな。
これ以上、私の気持ちが溢れ出ないうちに、堪えろ。